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介護現場のヒヤリ・ハットとは?事例や報告書の書き方、活用法を知り、介護職としてスキルアップ!
介護職として、ヒヤリ・ハットの報告書を書いたことはありますか?
一歩間違えば介護事故になりかねなかった、「ヒヤリ」としたことや「ハッと」したことを、記録するヒヤリ・ハット報告書。
介護職員の間で共有すれば、利用者の事故を未然に防ぐのに役立ちます。
でも、忙しい日々を送っている介護職の中には、「何のために書くの?」「書き方がわからない」といった疑問を口にする方も。
そこで今回は、ヒヤリ・ハット報告書の意義や書き方のポイントを詳しく解説!
よくあるヒヤリ・ハットの事例や、ヒヤリ・ハット報告書をケアに活かす方法についてもお伝えします。
介護職としてスキルアップしたい、レベルの高い職場で働きたいとお考えの方はぜひ参考にしてくださいね。
けあ子
ひよっこ介護士。
マスクをしているときに利用者に「べっぴんさんね」と褒められ、大喜びするも、マスクを外していると何も言われないことに気づいていない。
かいごろにゃん
介護業界に詳しく、けあ子のよき相談役。サイズの合うマスクがない。
介護のヒヤリ・ハットとは?
介護現場でヒヤリ・ハット報告書が大切な理由
介護現場は、常に事故のリスクと隣り合わせ。行政には、介護現場で起こった様々な重大事故の報告が寄せられています。
グラフによると、利用者の事故で最も多いのが転倒・転落など。次に誤飲や誤嚥と続き、命にかかわるケースも。
介護職の多くが、利用者が転びそうになっているのを見つけて「ヒヤリ」としたり誤飲をしそうになって「ハッ」としたりといった経験があるのでは?
大事には至らなくとも、こうしたヒヤリ・ハットが積み重なると、いずれ大きな事故につながりかねません。
「何事もなくて良かった」で済ませるのではなく、きちんとヒヤリ・ハット報告書にまとめて、スタッフ間で共有すれば、思わぬ問題点や危険に気付け、ケアを見直すことができます。
また、万が一、大きな事故が起こった場合に、ヒヤリ・ハット報告書を残していれば、これまで適切な対応をしていたことを証明でき、利用者の家族などとのトラブルを避けることができるでしょう。
- 利用者の安心・安全を守る
- ケアの質を上げる
- 適切なケアをしていたことの証明
- 家族とのトラブル回避
これらの理由から、ヒヤリ・ハット報告書を書くことはとても大切なのです。
介護のヒヤリ・ハットで参考になるのが「ハインリッヒの法則」。
これは、1920年代にアメリカのハインリッヒ氏が発見した法則で、1件の大きな事故の背景には、29の軽い事故と、300件のヒヤリ・ハットがあるというもの。
事故の前触れであるヒヤリ・ハットに注目し、適切に対応すれば、ミスを減らしトラブルを未然に防げると言われています。
ヒヤリ・ハット報告書と事故報告書の違い
ヒヤリ・ハット報告書は、介護現場で事故になりかねなかった事例を報告する書類ですが、「事故報告書」と混同されることがあります。では、ヒヤリ・ハット報告書と事故報告書は何が違うのでしょう。
以下の表をご覧ください。
- 介護現場における事故状況
ヒヤリ・ハット報告書 | 事故報告書 | |
---|---|---|
事故報告書 | 事故につながる可能性がある事例を報告 | 事故が起こった際の状況や原因、対応を報告 |
行政への提出 | なし | あり |
書類の保管義務 | なし | あり |
ヒヤリ・ハット報告書は、事故報告書と違い、行政への提出や保管の義務はありません。
このため、職場によっては、事故報告書に比べて、ヒヤリ・ハット報告書の扱いが軽くなるケースがあります。
しかし、介護現場のリスク管理の観点から、事故報告書と同様に、しっかり記入することが望ましいでしょう。
忙しいと小さなヒヤリ・ハットはスルーしがちになるけど、きちんと報告書を書くことで、介護職ひとり一人に危機管理意識が芽生えて、ていねいな仕事を心がけられるよ。
それに、報告書を見て、同じようなヒヤリ・ハットがたくさんあることがわかれば、問題点がはっきりして、改善に向けて動きやすくなるわね。
そうそう、一番ダメなのがヒヤリ・ハットを放置すること!ヒヤリ・ハットの扱い次第で、職場の質も問われそうだね。
なるほど~。でも、具体的にどこまでがヒヤリ・ハットなのか判断に迷うこともあるのよね。利用者さんに影響がなければ報告書にするほどでもないかなって。
あま~~い!!その油断に活を入れるためのヒヤリ・ハットなんだよ!次の章でヒヤリ・ハットの事例をいくつか紹介するから参考にしてみて!
介護現場のヒヤリ・ハットの事例を紹介
介護現場のヒヤリ・ハット事例01 車いすから落ちかける
車いすでの移動中、落とした本を拾おうと前かがみになり、転落しかけた。
【原因】
フットサポートから足をおろしていなかった。
【対策】
・不穏な動作が見られたら、スタッフが必ず声かけをする。
・フットサポートから足をおろす、ブレーキをかけるなど、体勢を変える際の正しい動作を伝える。
介護現場のヒヤリ・ハット事例02 入浴中におぼれかける
入浴中、浴槽から上がろうとしてよろめき、鼻の下まで沈んだ。
【原因】
のぼせた状態で立ち上がろうとしてうまく力が入らなかった。
【対策】
・のぼせないように湯温や入浴時間に気を配る。
・自立した利用者であっても、浴槽への出入りは必ず手すりにつかまるようスタッフが声かけするか、介助する
介護現場のヒヤリ・ハット事例03 他人の薬を飲みかける
食後、隣の席の利用者の薬を服用しそうになった。
【原因】
隣の席との距離が近く、すぐそばに内服薬があったため自分のものと勘違いした。
【対策】
・座席の距離を離し、本人以外の手元に薬を置かないようにする。
・服用の際は必ず見守りのスタッフを配置する。
どのヒヤリ・ハットも、利用者の心身に影響はありませんでしたが、一歩間違えば、骨折や心肺停止などの大きな事故につながっていた可能性があります。
実際には怪我や体調不良がなかったとしても、ヒヤリ・ハット報告書にまとめ、原因や対策を検討するなど、積極的に活用していきましょう。
ヒヤリ・ハットを重視し、報告書の提出を推奨・活用している職場は、リスクマネジメントの意識が高く、利用者に上質なケアを提供できていると言えるでしょう。
介護職として知りたい!ヒヤリ・ハットはなぜ起こる?
ヒヤリ・ハットの要因を理解すれば、介護現場における事故予防の糸口をつかめるかもしれません。
この章では、ヒヤリ・ハットが起こる要因を探ってみましょう。
ヒヤリ・ハットの要因01 利用者の個性を把握していない
利用者の個性を把握せず、適切でないケアをした場合、反発を招いたり信頼関係が崩れたりして、不測の事態が生じることがあります。例えば、トイレ誘導1つとっても、認知症の方と車いすの方では介助方法が違いますし、声のかけ方なども利用者の性格によって工夫が必要です。
利用者の心身の状態、要望やできること、生活スタイルなどをしっかりと理解し、最適なケアをすることが、ヒヤリ・ハットを防ぐ第一歩です。
ヒヤリ・ハットの要因02 環境や設備が整っていない
手すりがない場所がある、浴室の床が滑りやすいなど、利用者を取り巻く環境や設備に問題があることも。危ない場所がないか確認し、利用者が伝い歩きできるようテーブルの配置を工夫する、浴室の床に滑り止めマットをひくなど、工夫してみましょう。
バリアフリー化はもちろん、共有スペースの動線や居室の手すりの位置、ドアやベッドの形状、机の高さなど、安全性を十分に考慮し設備を整えている施設であれば、ヒヤリ・ハットの心配は少なくなるでしょう。
ヒヤリ・ハットの要因03 介護職の心身にゆとりがない
介護職の心身の状態が、ヒヤリ・ハットの要因となるケースもあります。忙しさのあまり、体調が優れない、イライラするといった時は、集中力を維持するのが難しく、普段なら気づく利用者の小さな変化を見逃してしまい、事故につながりやすくなります。
ゆったりした気持ちで介護にあたれるよう、体調管理に気を配ったり、不満やストレスの解消法を見つけたりすることが大切です。
いかがでしたか?
ヒヤリ・ハットが起こる要因は様々で、中には予測不能のケースもありますが、
- 利用者の情報がきちんと職員間で共有されている
- 施設の環境や設備が整っている
- ゆとりを持って働ける労働条件である
といった職場であれば、ヒヤリ・ハットのリスクは少ないと言えるのではないしょうか。
あなたの職場は、どのような状況でしょうか。
「人間関係が思わしくなく話し合いの機会が少ない」
「設備が古いまま改善されない」
「人手不足で残業が多く休みも取りづらい」
などの場合、ヒヤリ・ハットから大きな事故につながる可能性は否定できません。
もし、今の職場での様々な不満に改善が期待できず、転職をお考えなら、厚生労働大臣認可の就職支援センター「かいご畑」にご相談ください。
介護業界に詳しい専門のコーディネーターから、給料や労働条件はもちろん、職場の雰囲気やリスク管理についてなど、求人情報には載っていない細かい情報を知ることができます。
介護職として、納得のいく職場で働きたいという方は、お気軽にお問い合わせください。
人間関係が悪かったり、人手不足で忙しすぎたりすると、ヒヤリ・ハットを書く余裕もないだろうから、職場選びは大事よね。
人手が十分で労働条件がいい職場は、介護職の意識が高くてヒヤリ・ハットにしっかり対応していることが多いよ。そういう職場は利用者さんの満足度も高いよね。
よーし!私もこれからはしっかりヒヤリ・ハット報告書を書いて、利用者さんに今よりもっといいケアをするぞ!
その意気だよ!じゃあ、ヒヤリ・ハット報告書の書き方のコツを教えるね!
介護のヒヤリ・ハット報告書の書き方と例文
ヒヤリ・ハット報告書を書く目的は、「事故を未然に防ぐこと」。
状況や原因、対処法を分析するために後から見直す報告書ですので、書いた本人以外の誰が見てもわかりやすくまとめる必要があります。
文章が苦手だと「難しい」と感じるかもしれませんが、実は、ポイントはたった1つ!
出来事を以下の項目の順に並べるだけです。
- ヒヤリ・ハット報告書作成のための項目(5W1H)
1 | いつ(When) | 問題が発生した日時 |
2 | どこで(Where) | どんな場所のどんな場面で起きたか |
3 | 誰が(Who) | 問題となった人物は誰か |
4 | 何を(What) | 何が問題か |
5 | どうして(Why) | なぜその問題が起きたか |
6 | どうした(How) | どうやって解決したか |
「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「どうして」「どうした」という6つの項目は、報告書の基本の骨組みで、「5W1H」と呼ばれています。
昼食時、共有スペースで、●●様が激しくせき込んだ。「みそ汁の豆腐がのどに詰まった」と話され、前かがみの姿勢になっていただいて背中をタッピングしているうちに落ち着き、食事は完食した。看護師によるバイタルチェックと経過観察を行い、異常なしと判断。
この例文を6項目(5W1H)に分けると、以下のようになります。
1 | いつ(When) | 昼食時(●月●日●●時頃) |
2 | どこで(Where) | 共有スペースの食卓 |
3 | 誰が(Who) | ●●様 |
4 | 何を(What) | 激しくせき込んだ |
5 | どうして(Why) | みそ汁の豆腐がのどに詰まった |
6 | どうした(How) | ・背中をタッピングした ・看護師がバイタルチェックと経過観察を行い、異常なしと判断 |
文章にまとめづらい場合は、箇条書きでも大丈夫!
専門用語は使わずに、できるだけ簡単な言葉を選びましょう。
第3者が余計な先入観なしに状況を判断するために、「話を聞かない」「怒りっぽい」などの利用者様に対する私的な感情や印象は入れず、見たまま聞いたままを書くようにします。
ヒヤリ・ハット報告書の書式は、施設により様々ですが、今回ご紹介したポイントを意識すれば、誰が見てもわかりやすい内容になります。
決まった書式がない場合は、介護保険のソフトウェアやテンプレートを配布しているWEBサイトを活用しましょう。
使いやすいテンプレートをダウンロードすれば、ヒヤリ・ハット報告書の記入が断然ラクになります。
ヒヤリ・ハット報告書を今後の介護に活用しよう!
報告書にある様々な事例を、
- 設備や環境に問題がなかったか
- スタッフの対応は適切だったか
- 利用者の心身の状況は把握できていたか
などの角度から検証し、ヒヤリ・ハットが重大な事故に発展しないよう、対策していきます。
いろんな人の意見を聞くことで、新たな発見や気づきがあり、あなた自身の成長にもつながります。
この機会に、ヒヤリ・ハットをはじめとする職場のリスク管理の状況や働き方について、ぜひ見直してみてくださいね。
- ヒヤリ・ハット報告書は介護現場のリスク管理に重要!
- ヒヤリ・ハット報告書を書くコツは「5W1H」!
- ヒヤリ・ハットを大切にする職場でケアの質を高め自分自身も成長しよう!
介護職の就職・転職をサポートする「かいご畑」が、介護のお仕事や業界に関する情報をお届けする、お役立ちコラムです。
かいご畑では、介護の資格をもつコーディネーターが、今回お届けした情報など専門的な立場からお仕事探しのサポートを行います。
厚生労働大臣認可の就職支援センターなので、利用は無料です。
「お仕事に関する不安や、悩みを聞いてほしい」という相談だけでもOKですので、まずは気軽にご連絡ください!
介護のヒヤリ・ハットの大切さについて、よくわかったわ。ありがとう、かいごろにゃん!
どういたしまして。さて、一緒に虹色たい焼きを食べようか。
たい焼きの食べ過ぎによるヒヤリ・ハットも見過ごせないわね。太りすぎや糖分の過剰摂取で懸念される疾病は…。
あわあわ、そのリスク管理ちょっと待ったー!!
本コラムは、「かいご畑」を運営する株式会社ニッソーネットが、専門家の監修のもと執筆しています。
■監修者
野口 哲也
( のぐち てつや )
みんな、介護のヒヤリ・ハットについてはわかったかな?
もっと詳しく知りたいという人のために、介護のヒヤリ・ハットに関する豆知識をお届けするよ。ぜひ参考にしてみてね!
介護施設におけるヒヤリ・ハットの活用状況は?
多くの介護施設で、リスク管理の一環として採用されているヒヤリ・ハット報告書。しかし、その活用状況は施設により様々なようです。
以下のグラフをご覧ください。
- グラフは、「平成 30 年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査/厚生労働省」を参考に当社が作成
事故につながる可能性が高い事例については、調査した介護施設の93%が報告の対象としているものの、利用者に影響がなかったものは約48%と半分以下となっています。
どこまでをヒヤリ・ハットの対象としているかは、施設の方針や判断によるところが大きいようです。
その上で、ヒヤリ・ハット報告書の活用の問題点として、
- 要因の分析と改善策の検討が不十分
- 改善がうまくいかず、同様のケースが再発する
- 職員によって、ヒヤリ・ハットに対する認識が違う
- 職員全員への周知が難しい
などの声が上がっています。
これらの解決に向けて、
- ヒヤリ・ハットの書式を見直し、より分析しやすくする
- 職員の気づきや予測のスキルアップを図る
- 報告書の積極的な作成を推奨し意識統一を図る
- 職員全体に周知できるよう報告会を設ける
などの改善が進むことが期待されます。
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