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食事介助の注意点とは?介護職が知っておきたい高齢者の食事の基礎知識や誤嚥の対応策を提案!
食事介助のやり方、自己流になっていませんか?
多くの人にとって、食事は毎日の楽しみ。高齢になっても、介護職のサポートで毎日きちんと食べることができれば、健康維持だけでなく生きる喜びにもつながります。
でも、利用者の身体の状態によって、食事形態やメニューは違いますし、食の好みや食べるスピードも人それぞれ。美味しく食事を楽しんでもらうには、様々な工夫やテクニックが必要で、介護職初心者さんでなくても、実は難しいのが食事介助です。
「このやり方で合ってる?」「こんな時どうしたらいいの?」と不安を感じつつ、毎日の食事介助を何とかこなしているという人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、正しい食事介助の方法や注意点を解説!
高齢者の食事の特徴などの基礎知識はもちろん、食事拒否や誤嚥などの対応策についてもお伝えします。
高齢者の食事介助について詳しく知りたい方、自己流を脱却したい方はぜひ参考にしてくださいね。
けあ子
ひよっこ介護士。
食事介助の最中に盛大にお腹の虫が鳴り、利用者によく笑われる。
かいごろにゃん
かいご畑に住みついたネコのようないきもの。
介護業界に詳しく、けあ子のよき相談役。お腹がすくと喉をゴロゴロ鳴らして催促する。
介護職初心者さんが知っておきたい、食事介助の大切さ
まず、食事介助が必要な理由と目的を知り、毎日の食事介助が、利用者にとってどれほど大切なのかを理解しましょう。
食事介助はどうして必要?
高齢者に食事介助が必要な主な理由を、3つお伝えします。
咀嚼(そしゃく)や嚥下(えんげ)、消化ができない
高齢になると、
- 歯が弱くなって噛めない
- 唾液の分泌が減って飲み込みづらい
- 消化器官が弱って消化不良を起こしやすい
という人が多くなります。
そこで、誤嚥や体調不良が起きないよう、問題なく咀嚼・嚥下ができているか、適切な量を摂取できているかなどを、介護職がそばで見守る必要があります。
麻痺や寝たきりなどで動きに制限がある
筋力の衰えや麻痺などで、身体の動きに制限がある利用者もいます。ベッドから起き上がれない、食器が持てないなどの場合は、自力で食べることができません。
介護職が食べやすいよう体勢を調整したうえで、食べ物を口まで運ぶことで、安全に、きちんと食事をとることができます。
記憶力や認知能力が低下する
加齢による物忘れや認知症により、食事を忘れる・食べても覚えていない、ということもあるでしょう。味覚や満腹中枢がうまく働かず、塩分やカロリーの過剰摂取になることも。
毎日決まった時間に、適切な量やカロリーの食事を促すことで、健康維持につながります。
高齢者の食事は、一歩間違うと、誤嚥による肺炎(誤嚥性肺炎)など、命の危険も伴います。安心・安全に食事を楽しんでもらうためには、適切な食事介助が不可欠なのです。
誤嚥性肺炎とは
食べ物など、本来入ってはいけないものが気管に入る(誤嚥)ことに起因する肺炎。高齢者の肺炎の7割が誤嚥性肺炎と言われているよ。 介護施設でも、誤嚥性肺炎による入院例は多く、食事介助の際には誤嚥を防ぐための細心の注意が必要なんだ。
食事介助の目的とは
介護職が食事介助を行う目的は以下の通りです。
- 生きるために必要な栄養を取る
- 心身の機能を維持する
- 楽しみや生きがいをつくる
栄養バランスの取れた適切な量の食事をとることで、栄養失調や生活習慣病のリスクを減らし、免疫力も高まります。
「噛む」「飲み込む」という動作は脳を活性化させると言われていますし、唾液が分泌されて、口内環境や胃腸の働きも良くなります。
何より、美味しい食事は毎日の楽しみであり、生きる喜びにもつながります。
食事介助は、利用者の生活の質を上げるためにとても重要。安全に、安心して食事を楽しむ利用者の笑顔は、介護職にとっても大きなやりがいとなるでしょう。
高齢者が食べやすい食事の工夫と介護食
高齢者が食べやすい食事の工夫や、介護食の種類について理解を深めましょう。
食べやすい食事の工夫
高齢者にとって食べやすい食事とはどんなものでしょうか。例を挙げてみましょう。
やわらかい食事
噛む力が弱くなるため、食材は煮たり蒸したりしてやわらかく調理します。
肉であれば、皮を除いた鶏肉や、薄切りの牛・豚のヒレ肉など。魚貝なら、ほぐしやすいタラやホタテの貝柱など。野菜は、皮をむいたトマトやカブなどがやわらかく食べやすい食材です。
水分の多い食事
唾液の分泌が少なく口内がパサつきやすくなるため、汁物やあんかけにすると飲み込みやすくなります。
パンは一見やわらかく食べやすそうですが、水分が少なく口の中に張り付くため、小さくちぎって牛乳やスープに浸します。そのほか、パサつく食材は、ドレッシングやマヨネーズで和えるとなめらかになります。
旨味や香りを感じられる食事
味覚の変化で濃い味を好むようになることも多いため、塩分を取りすぎないよう、味付けに気を配ります。
出汁を濃くしたり、レモンやカボスなどのかんきつ類の香りで食欲を刺激したり、シソやショウガ、ワサビなどの香味野菜を取り入れたりすると、薄味でも美味しく感じられるでしょう。
高齢者向けの食事(介護食)の種類
ほとんどの介護施設では、食事介助が必要な利用者のために、調理方法を工夫した「介護食」を提供しています。
介護食を選ぶうえで参考になるのが、日本介護食品協議会が制定した「ユニバーサルデザインフード(UDF)の4つの区分。
■介護食の区分
区分 | 噛む力の目安 | 飲み込む力の目安 | 食材のかたさの目安 |
---|---|---|---|
①容易に噛める | かたいもの、大きいものはやや食べづらい | 普通に飲み込める | ご飯~やわらかいご飯/厚焼き玉子 |
②歯茎でつぶせる | かたいもの、大きいものは食べづらい | ものによっては飲み込みづらいことがある | やわらかいご飯~全粥/だし巻き卵 |
③舌でつぶせる | 細かくて柔らかければ食べられる | 水やお茶が飲み込みづらいことがある | 全粥/スクランブルエッグ |
④噛まなくてもよい | 固形物は小さくても食べづらい | 水やお茶が飲み込みづらい | ペースト粥/トロトロ茶碗蒸し(具なし) |
※表は、「ユニバーサルデザインフードとは/日本介護食品協議会」を参考に当社が作成
この区分をもとに、主な介護食の種類を紹介します。※介護食の名称は、介護施設により異なることがあります。
きざみ食
食区分①の「容易に噛める」食事です。食材を小さくきざんでいます。噛む力が弱っている人や口を大きく開けにくい人も食べやすく、食感は普通の食事に近い状態です。
軟菜食(やわらか食)
食区分②の「歯茎でつぶせる」食事です。特殊な製法で食材をとても柔らかく調理しています。歯がなくても歯茎でつぶせ、見た目も普通の食事に近い状態です。
ムース食(ゼリー食・ソフト食)
食区分③の「舌でつぶせる」食事です。食材をペースト状にした後、ゼラチンや寒天で形を整えています。噛む力がほとんどなくても安全に飲み込みやすく、見た目も普通の食事に近づけています。
ミキサー食
食区分④の「噛まなくてもよい」食事です。食材をミキサーなどでポタージュ状にしたものです。まったく噛めない人でも飲み込めて消化吸収に優れていますが、見た目や食感が普通食とかなり異なります。
食事介助の正しい手順と注意点
では、食事介助の一般的な手順と注意点を見ていきましょう。
食事介助の流れ
食事の時間であることを利用者にお知らせします。しっかり目を覚ましているか、血圧や体温は正常か、食欲はあるかを確認します。食事中にトイレに行きたくなってそわそわしないよう、先にトイレをすませてもらいます。
食事をする場所やテーブルを片付けて清潔にします。テレビやラジオは消して、静かな音楽を流すなど、リラックスできるよう環境を整えます。利用者の状況に合わせて、椅子やベッド上で安全に食事ができる姿勢を確保します。
うがいや歯磨き・スポンジブラシなどで口腔ケアをします。口の中が汚れたままだと、万が一誤嚥をしたときに、気管に雑菌が入って誤嚥性肺炎になるおそれがあるからです。嚥下がスムーズになるよう、水分補給で口の中を潤します。
利用者によく見える位置に配膳し、メニューの説明をして利用者の食欲を刺激します。食の好みを知り、食べる順番やタイミングを計るためにも、「何から食べたいですか?」「苦手なものはないですか?」など、積極的に声かけします。
利用者の隣(片麻痺がある場合は健側)に座ります。食事は、水分の多いものや利用者の好物から食べてもらい、主食・副食・水分をバランスよく順に口にできているか、きちんと飲み込めているかを確認します。
食事に時間がかかりすぎると、利用者を疲れさせてしまいます。30分程度を目安に、「ごちそうさまでいいですか?」と利用者に確認して食事を切り上げます。食べた量を記録し、下膳します。
服薬が必要な利用者には服薬介助をします。虫歯や歯周病を防ぐため、うがいや歯磨き・スポンジブラシで口の中を清潔にします。食後は、リラックスできる体勢で休憩してもらいます。食べたものが逆流することがあるので、すぐに横になるのは避けます。
食事介助の注意点
食事介助の注意点はたくさんありますが、ここでは、誤嚥事故につながりかねないポイントを挙げています。
立ったまま食事介助をしない
立ったままだと、利用者が介護職を見上げて顎が上を向きます。顎が上を向くと、気道が開いて誤嚥をしやすくなります。安全に食事介助をするために、介助者の位置は利用者の隣や斜め前で、ややうつむいた姿勢で食べられるよう調節しましょう。
一口量を少なめに、ペースはゆっくりめに
一口の量が多かったり、スプーンを口に運ぶペースが早かったりすると、うまく飲み込めず誤嚥につながります。一口の量はスプーンの3分の2を目安に、利用者によって加減し、飲み込んだのを確認してから次の一口を差し出します。
口の中に食べ物があるときは声かけしない
利用者の口の中に食べ物があるときに話しかけると、返事をしようとして誤嚥が起こる可能性があります。食事中の会話はコミュニケーションの一環として大切なことですが、声かけは、飲み込み終わったタイミングを見計らいましょう。
ここでご紹介したことは、食事介助の基本です。この基本がきっちり守れている職場なら、誤嚥事故のリスクも少なく、介護職としても安心して働けるでしょう。
しかし、人手不足で余裕のない職場では、「スピード重視で流れ作業」「研修がなく自己流」というケースもあるようです。
あなたの職場ではいかがですか?
食事の豪華さ、メニューの豊富さをアピールする介護施設は多いですが、食事介助をどのように行っているかも、職場の質を見極めるチェックポイントと言えそうです。
当然だけど、急かしたり、無理に口に入れたりはNGだよ。せっかくの食事が楽しくなくなっちゃうからね。
肝に銘じるわ。でも、なかなか口をあけてくれない利用者もいて、困ってるの。
確かに、食べてくれないと焦るよね。どうしたらいいか、次の章で考えてみよう。
こんなときどうする?食事介助の困りごと
「利用者に食事を楽しんでほしい」と思いつつ、スムーズな食事介助ができず困っている介護職もいるでしょう。
この章では、食事介助の困りごとの対応策をお伝えします。
口をあけてくれない
利用者が口をあけてくれないときは、声かけをしながら、水分や好物を口に運んでみましょう。唇にスプーンを優しくあてると、口を開いてくれることもあります。おにぎりやパンなど、手でつかめるものを渡してみるのもいいでしょう。
「食の好みが合わない」「体調がすぐれない」など、口を開けない理由は様々です。無理やり食べさせたりはせず、看護師など多職種で対応策を検討しましょう。
時間がかかりすぎる
食事介助に1時間以上かかる場合は、ペース配分や食べる量を見直してみましょう。時間をかけすぎると、利用者の胃に負担がかかりますし、生活リズムの乱れにもつながります。食事時間は長くても30分程度で切り上げ、全部食べ切らなくてもOKです。
ただし、水分不足による脱水症状には注意が必要です。あまり食べられなかった時は、他の職員とも協力し、食事時間以外にもこまめに水分補給を促しましょう。
むせる
食事介助中に利用者がむせてしまったときは、顔を下に向けてもらい、口の中の物を吐き出させます。咳き込む時は、口元を手などで押さえず開放してもらいます。背中を軽くたたく・さするなどで、呼吸が落ち着くのを待ってから、食事を再開します。
呼吸困難になったときは、速やかに他の職員や看護師の応援を呼び対処します。頻繁にむせる場合は、看護師など多職種で検討し、食事の内容や種類を見直しましょう。
介護職の食事介助で気を付けたいのは、「食べさせているのは自分だから」と1人で抱え込まないこと。
食事介助の上手な職員にコツを聞くなどして、いろんな工夫を取り入れていきましょう。そのためには、職員同士で協力して問題解決に取り組める職場かどうかも重要なポイントです。
食事は、利用者にとって大きな楽しみ。ご飯とおかずを混ぜたり、次々と口に押し込んだりと、不適切なケアで苦しい思いをさせないよう、正しい食事介助の知識や技術を身に付けていきたいですね。
正しい姿勢やスプーンテクニックで誤嚥を防ごう!
食事介助で誤嚥事故が起こらないようにするには、利用者に正しい姿勢を保ってもらうことや、介護職のスプーンテクニックも大切です。
詳しく説明しましょう。
食事介助の正しい姿勢
食事介助で正しい姿勢を保つポイントを、利用者の状況別にまとめてみました。
いす・車いすでの食事介助の姿勢
座る姿勢が保てる利用者の場合は、いすや車いすをテーブルにセッティングします。テーブルと身体は握りこぶし1つ分くらいの間隔をあけます。
深く腰掛け、軽く前かがみになった状態で、「膝の角度が90度になる」「足の裏が床に付く」「テーブルに肘が置ける」などをチェックして調整します。
車いすの場合も、フットサポートではなく床に直接足を付けます。姿勢が安定しなければ、足元に踏み台を置く、背中にクッションをはさむなど工夫します。
ベッドでの食事介助の姿勢
ベッドの場合も、リクライニングは90度が理想ですが、利用者の状況に合わせて、60度から45度に調節します。ずり落ちを防ぐために、腰を背もたれにしっかり添わせ、足を軽く曲げてもらいます。
首が反らないよう、後頭部にクッションをはさみます。姿勢が安定しないようなら、膝や足裏にもクッションをはさみましょう。
片麻痺などで起き上がりがかなり難しい場合は、30度に調節します。健側を下にした横向き(側臥位)で、顔は上向きになるようクッションで支えます。
リクライニングの適切な角度は利用者により異なります。60度や45度、30度にする根拠をきちんと理解して食事介助を行いましょう。
食事介助のスプーンテクニック
食事介助で使用するスプーンの種類や、こぼさず上手に食事介助をするためのテクニックについてまとめてみました。
食事介助に適したスプーン
食事介助のスプーンは、持ちやすいように柄の部分が大きめ、口に入れやすいようにすくう部分(つぼ)は小さく浅めの物を選びます。つぼがあまり大きいと一口量が多くなり飲み込みづらくなりますし、深いと食べ物がこそぎづらくなります。
口が開きづらい利用者向けの、つぼ部分が薄く平たい介助用スプーンもあります。
スプーンを噛む癖のある利用者には、金属製より、シリコンゴム製などやわらかい材質を選ぶと、歯や歯茎を傷める心配が減ります。
こぼさずに食べてもらうためのテクニック
利用者の口に食べ物を運ぶ際、一口量は、スプーンの先端から2/3程度を意識しましょう。食べ物を山盛りにするとこぼれやすくなりますので、できるだけ平たくのせます。
利用者の目に食べ物がしっかり映り、顎が下を向くよう、スプーンはやや下から口に運びます。「おかゆですよ、美味しそうですね」など声かけもして、利用者が口を開くよう促します。
利用者が口を開けてくれたら、食べ物が口に入ったのが分かるように、スプーンを下唇に触れさせます。上唇が閉じて食べ物を取り込んだのが確認できたら、スプーンを水平に引き抜きます。
食べ物が口に入った状態で利用者の動きが止まってしまった場合は、スプーンで軽く舌を押すか、下あごのあたりを優しくさすってみると、咀嚼してくれることがあります。
スプーンの種類を変える、ちょっとしたテクニックを駆使するなどで、食事介助がぐんとスムーズになることも。
正しい食事介助のやり方をマスターしたうえで、利用者に合わせた対応を模索していけば、介護職としてのスキルアップにもつながります。
「食事は楽しみ」という気持ちを忘れずに、食事介助に取り組んでくださいね。
- 食事は楽しみ」を念頭に、適切なケアを心がけよう!
- 食事介助の悩みや困りごとは、多職種で協力して解決しよう!
- 正しい姿勢やスプーンテクニックを知り、スムーズな食事介助を!
この記事を書いたのは
「教えて!かいごろにゃん」 シリーズは、
介護職の就職・転職をサポートする「かいご畑」が、介護のお仕事や業界に関する情報をお届けする、お役立ちコラムです。
かいご畑では、介護の資格をもつコーディネーターが、今回お届けした情報など専門的な立場からお仕事探しのサポートを行います。
厚生労働大臣認可の就職支援センターなので、利用は無料です。
「お仕事に関する不安や、悩みを聞いてほしい」という相談だけでもOKですので、まずは気軽にご連絡ください!
食事介助についてわかったかな?じゃあ、夕食はたい焼きでよろしくね♪
おやつもたい焼きだったじゃない!糖分とカロリー過多は健康に良くないのよ。
やだやだ、たい焼き食べさせてよー!!
やれやれ、わがまま猫の食事介助までする羽目になるとは…。
この記事の監修者
本コラムは、「かいご畑」を運営する株式会社ニッソーネットが、専門家の監修のもと執筆しています。
■監修者
野口 哲也
(のぐち てつや)
介護福祉士養成校の講師や、介護資格の講座立ち上げ・運営など、介護・福祉人材の育成に尽力。現在は、実務者研修や喀痰吸引研修をはじめとする介護資格講座の教務・企画、講師育成など品質管理業務に携わる。介護保険制度や法律に関する知見の深さと人材育成に対する情熱を持ち、介護業界関係者からの信頼も厚い。
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