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排泄介助の苦手克服で介護職としてステップアップ!スムーズなケアの手順や注意点を解説
排泄介助は3大介護の1つですが、介護職として、抵抗なく取り組めていますか?
便は健康のバロメーター。排泄介助を通して、利用者の健康状態を把握できますし、自分で排泄できるよう適切なケアをすることで、生活の質の向上がめざせます。
でも、「匂いや見た目に抵抗がある」「他の介護業務は好きだけど、排泄介助だけ苦手」という介護職初心者さんもいるでしょう。排泄介助がネックになって、介護職への転職をためらっている人もいるかもしれません。
そこで今回は、排泄介助への理解を深めるために、利用者の状況によって変わる排泄方法やスムーズな手順を解説!排泄介助の苦手克服をめざします。
どうしても苦手な方のために、排泄介助の負担が軽い職場についてもお伝えしますので、ぜひ参考にしてくださいね。
けあ子
ひよっこ介護士。
最初は排泄介助が苦手だったが、今では利用者が快便だと自分もスッキリ。
かいごろにゃん
かいご畑に住みついたネコのようないきもの。
介護業界に詳しく、けあ子のよき相談役。トイレ誘導はできないが、たい焼き屋への誘導はできる。
排泄介助の目的と大切さを知ろう!
排泄介助とは、食事介助や入浴介助と並ぶ介護職の代表的な仕事の1つ。職場によっては、「業務の中心は排泄介助」というところもあるほど、仕事内容の中で大きなウエイトを占めます。
排泄介助は、単に利用者をトイレに連れて行ったりおむつを替えたりするだけではありません。
排泄物の状態から体調を把握したり、デリケートな部分を清潔に保ち感染症を予防したりと、利用者の健康維持にとても重要。
排泄を適切にケアすることで、利用者の尊厳を守り、認知症の予防や生活意欲の向上につながることもわかっています。
要介護度3以上の利用者が入所する特別養護老人ホームを対象に行った調査によると、9割近くが利用者の排尿・排便状況の改善に取り組んでいます。
■排泄(排便・排尿)状態の改善に向けた取り組み
排泄に関する研修会の実施や参加、排泄の自立に向けた取り組みのマニュアル化、排泄に特化した委員会やカンファレンスを積極的に行っている事業所もあります。
介護職の役割は、利用者が自立した健やかな生活を支援すること。
生活の基盤の1つである「排泄」ときちんと向き合い、排泄介助の正しい知識や技術を身に付けることで、介護のプロフェッショナルとして大きな成長が望めるでしょう。
利用者の状況に合った排泄方法を選ぼう
排泄介助は、利用者の状況により、様々な種類があります。
この章では、排泄介助の種類と手順を簡単にお伝えしましょう。
トイレでの排泄介助と手順
自力や介助があれば歩行ができる、立ち座りの姿勢が保てる利用者は、トイレでの排泄介助になります。
■トイレでの排泄介助の一例
- 利用者の移動ペースに合わせてトイレまで誘導する
- トイレ内では手すりをしっかり握ってもらい、必要に応じて脱衣を手伝う
- 便座にきちんと座れているか確認する
- 排泄が終わったら声掛けしてもらうよう伝え、トイレの外で待機
- 必要に応じ清拭を手伝い、肌や便の状態、体調に変化がないかさりげなく確認
- 必要に応じ、着衣を手伝う
衣類の脱着や清拭などは、できるだけ自分でしてもらうようにしましょう。時間がかかるかもしれませんが、利用者を焦らせないよう見守る姿勢が大切です。
ポータブルトイレでの排泄介助と手順
近距離であれば歩ける・夜中のトイレが頻繁な利用者には、持ち運び可能でベッドのそばに設置できるポータブルトイレが便利です。
■ポータブルトイレでの排泄介助の一例
- ポータブルトイレをベッドの近くなどの安全な場所に設置し、利用者を誘導する
- ポータブルトイレの手すりや職員の肩などにつかまってもらい、必要に応じて脱衣を手伝う
- 便座にきちんと座れているか確認し、プライバシー確保のために下腹部にタオルなどをかける
- 排泄が終わったら声掛けしてもらうよう伝え、少し離れて待機
- 必要に応じ清拭や着衣を手伝い、体調に変化がないか確認
- ポータブルトイレの中のバケツを取り出し、排泄便の状態を確認後、トイレに流す
排泄後は、速やかにポータブルトイレを洗浄しましょう。室内に匂いがこもらないよう換気に気を配ります。消臭スプレーを使用してもいいでしょう。
尿器・差し込み便器での排泄介助と手順
起き上がりやベッドからトイレまでの移動が難しい利用者で、便意や尿意を介護職に伝えられる場合は、差し込み便器や尿器を使用します。尿器には女性用と男性用があります。
■差し込み便器での排泄介助の一例
- 排泄しやすいよう、ベッドの角度を調節するなど、座位に近い姿勢にする
- 腰を上げてもらうか、横向むきになってもらい、下半身の衣類を下げる
- 腰から下の位置に防水シートを敷き、利用者の膝を立てた状態で便器をあてがう
- 排泄中の飛び散りを防ぐため、陰部にティッシュを当てておく
- 排泄が終わったら便器を外し、陰部を清拭またはシャワーボトルなどで洗浄する
- 便の状態や利用者の体調を確認し、便器を洗浄する
便器の中にあらかじめティッシュを引いておくと後始末が楽になります。排泄中は、ベッド周りのカーテンを引くなど、利用者のプライバシーに配慮しましょう。
おむつでの排泄介助と手順
ベッドから起き上がりができない、便意を介護職に伝えられないなどの場合は、おむつを使用します。尿取りパッドとの併用で、交換の手間やおむつ代が節約できます。
■おむつの排泄介助の一例
- おむつを交換することを利用者に伝え、介助しやすいようベッドの高さを調整する
- 体位交換がしやすいよう腕を組んでもらい、下半身の衣服を脱がせる
- 利用者を横向きにし、お尻の下に防水シートを敷いて新しいおむつをセットする
- 汚れたおむつをはずし、排泄物の状態を確認、陰部を清拭するかシャワーボトルなどで洗浄する
- 必要に応じ塗り薬や保湿剤を塗布した後、新しいおむつを付け、衣類を着せる
- 布団をかけ、体調に変化がないか確認する
汚れたおむつやパッドは、丸めてゴミ袋に入れ、袋の口を結んで廃棄します。シーツやパジャマが汚れている場合は、必ず新しいものと交換します。衛生面に配慮し、介助の際は必ず手袋を着用しましょう。
おむつでの排泄介助の場合は、おむつの当て方に細心の注意を払ってね。利用者の体形に合わせて正しくおむつを当てないと、漏れや褥瘡の原因になるよ。
利用者に不快な思いをさせないよう、清潔に手早く、適切な位置におむつを当てるよう気を付けているわ。
いい心がけだね。ただし、おむつはあくまで最終手段。利用者の尊厳を保つためにも、自力での排泄をサポートするのが介護職本来の役割だよ。
確かに…!大事なことを見失わないよう、気を引き締めなくちゃ!
排泄介助で介護職が大切にしたいこと
この章では、介護職が排泄介助をするにあたって大切にしたいポイントをまとめました。
利用者の自尊心を守る
「情けない」「恥ずかしい」と排泄介助を嫌がる利用者も多いでしょう。排泄に関する話題や失敗を公にするのは避け、排泄中は扉を閉める、カーテンで隠すなど、プライバシーに配慮しましょう。排泄を急かしたり失敗を責めたりするのはご法度です。
できることは本人に任せる
効率を重視して介護職が全て介助しては、利用者の生活機能や意欲が低下してしまいます。トイレまでの移動や、衣類の脱着、清拭など、できることは本人に任せ、見守りに徹しましょう。自力での排泄は、利用者の自尊心を守ることにもつながります。
利用者の排泄サイクルを整える
便意や尿意を感じにくい、うまく伝えられない利用者には、起床時や食後、就寝前などのタイミングでトイレへ誘導します。決まった時間にトイレに行く習慣づけをするほか、便通を整えるための水分補給やマッサージ、運動を促すなどの働きかけも大切です。
排泄というプライベートな行為を他人に手伝ってもらうのは、誰しも抵抗があるもの。
排泄介助を受けることに引け目を感じた利用者が、できるだけトイレに行かずに済むよう飲食の量を減らしたり、排泄をガマンしたりするケースもあり、健康への影響が懸念されます。
劣等感や屈辱感、羞恥心といった利用者の複雑な感情を理解し、「そわそわしている」など、排便のサインを見逃さず、さりげないサポートを心がけましょう。
「介護職が忙しそうで声をかけづらい」「待たせて悪いから早く済ませないと」などの遠慮や焦りを利用者に感じさせることのないよう、気兼ねのいらない関係を作りたいですね。
できることは自分でしてもらって、おむつを使うのは最終手段。利用者の状況により、ポータブルトイレや尿取りパッドの併用など、失敗を減らす工夫を取り入れます。介護職のサポートによって、おむつを外し、トイレで排便できるようになった例もあります。
自力での排便は、利用者の自信となり、生活の質も向上します。成功を一緒に喜び、利用者の生きる力を育んでいきましょう。
トイレに不安があると、外出するのも億劫になっちゃうものね。運動量が減ると便秘になりがちで、健康状態が心配になるわ。「自分でトイレに行く」って、当たり前のようで、健全な生活に欠かせない大事なことなのね。
その通り!いかに利用者がトイレで失敗しないようにするか、自力でできるようサポートできるかが、介護職の腕の見せ所だよ。
そう考えると、排泄介助ってやりがいがあるわね!後輩ちゃんも、苦手を克服できるといいんだけど…。
排泄介助は大変な部分も多いからね。次の章で見てみようか。
排泄介助の困りごと~夜間の排泄介助について~
排泄は、人間の尊厳にかかわるデリケートな行為だけに、利用者だけでなく、介護職にとっても、大きな負担がかかります。
できるだけ自分で排泄できるようサポートしたくても、利用者それぞれの排泄のタイミングに合わせるのは、忙しい業務の中では難しいことがあります。1人の排泄介助に時間を取られて、他の利用者への対応が遅れたり、業務が回らなくなったりという心配もあります。
参考までに、排泄介助における介護職の身体的・心理的負担について、厚労省が行った調査結果をご覧ください。
■介護職が感じる排泄介助の負担感
※グラフは「排泄介護の各プロセスにおける効率的な支援を実現するための介護技術開発に関する検討/厚生労働省」を参考に当社が作成
調査によると、排泄介助で、介護職が身体的・心理的にもっとも負担に感じるのは、「夜間の頻繁なコールによる排泄介助や排泄誘導」。
「寝ている間に漏らすのでは」といった不安などから、利用者が夜中に何度もコールを鳴らし、介護職に付き添われてトイレに行くというのは、珍しいことではありません。
同じ利用者から数分おきに呼び出され、トイレに行っても何も出ない…というケースもあります。
人員配置の少ない夜間に、排泄介助に多大な時間を取られると、介護職も疲弊してしまいます。
夜中に利用者がトイレで目覚めないよう、
- 就寝前に必ずトイレに誘導する
- 朝までぐっすり眠れるよう、日中に適度な運動を取り入れる
- 湯たんぽなどを入れて、冷え対策をする
- 夜間だけポータブルトイレや尿取りパッドを使い、失敗の不安をなくす
などの対策を考えてみましょう。
夜中の頻繁なコールは、認知のゆがみや利用者の心因的な問題の可能性もあります。
介護職はもちろん、ケアマネジャーやリハビリスタッフとも連携し、利用者にとってより良い対策を検討しましょう。
排泄介助の負担の少ない職場とは
ここまでお伝えしてきた通り、排泄介助が介護職の業務に占めるウエイトは高く、避けて通れない仕事と言えます。
適切なタイミングのトイレ誘導やケアで、認知症の改善や要介護度が下がる例もあり、排泄介助を通して感じるやりがいは大きいでしょう。
とは言え、「どうしても排泄介助に抵抗がある」「何年たっても慣れない」という人もいます。苦手意識は、個人的な感情の問題ですので、やりがいや使命感だけで排泄介助への抵抗感をなくすのは難しいかもしれませんね。
でも、排泄介助だけがネックなら、介護職を諦める必要はありません。
自立した利用者の多い職場なら、排泄介助の負担が少なく、介護職として自信をもって働けるでしょう。
この章では、排泄介助が苦手な方におすすめの介護施設をご紹介します。
デイサービス
デイサービスは、要支援~要介護度が低い、自立した利用者がメインの施設。トイレ誘導のみなど、比較的負担の軽い排泄介助が多いでしょう。日中のみのサービスのため、夜間の頻繁なコールに悩まされる心配もありません。
▼デイサービスでの働き方をもっと知りたい方はこちら
住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームは、自立~要介護度の低い高齢者向きの施設です。排泄介助を含む身体介護は、基本的に外部や併設の訪問介護事業所の職員が行うため、排泄介助なしでの勤務が期待できます。
▼住宅型有料老人ホームでの働き方をもっと知りたい方はこちら
ホームヘルパー(訪問介護員)
利用者の自宅に訪問するホームヘルパーの業務は、利用者の状況に応じて作成されたケアプランで定められています。炊事や洗濯などの生活援助がメインの利用者宅での業務なら、排泄介助を行うことは少ないでしょう。
▼ホームヘルパーの働き方をもっと知りたい方はこちら
この他にも、排泄感知センサーや、見守りシステムを導入し、介護職の負担軽減に努めている施設も増えています。
排泄介助の負担が少ない職場で経験を積んでいく中で、「もっと利用者の生活に深く関わりたい」「利用者ができないことをできるようにサポートしたい」という気持ちが沸き上がれば、介護職として大きくスキルアップするチャンスです。
全国的に人手不足の介護業界。人材を集めるため、研修や資格取得の支援などを充実させ、成長できる環境を用意している職場がたくさんあります。
厚生労働省認可の就職支援センター「かいご畑」では、あなたの希望条件をお伺いしたうえで、より良い求人をご紹介しています。
介護職の仕事に不安のある方、もっと条件のよい職場で働きたい方の相談も受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。
- 排泄介助は利用者の状態に応じた方法で適切なケアを
- おむつは最終手段!自力での排泄をサポートしよう
- どうしても苦手なら排泄介助の負担の少ない職場を選べばOK!
この記事を書いたのは
「教えて!かいごろにゃん」 シリーズは、
介護職の就職・転職をサポートする「かいご畑」が、介護のお仕事や業界に関する情報をお届けする、お役立ちコラムです。
かいご畑では、介護の資格をもつコーディネーターが、今回お届けした情報など専門的な立場からお仕事探しのサポートを行います。
厚生労働大臣認可の就職支援センターなので、利用は無料です。
「お仕事に関する不安や、悩みを聞いてほしい」という相談だけでもOKですので、まずは気軽にご連絡ください!
排泄って、食事や入浴みたいに時間を決められるものじゃないだけに難しいけど、毎日利用者を見てたら、トイレのタイミングもわかるようになるの。成功したら嬉しいわ♪
成功体験の積み重ねが、利用者はもちろん、介護職の自信にもつながるんだね。
後輩ちゃんも、早くこの喜びに目覚めて、排泄介助の苦手を克服してくれたらいいな。ところで、お腹すいちゃった。カレーでも作ろうか。
…たい焼きの買い置きあるから遠慮しとくよ。
この記事の監修者
本コラムは、「かいご畑」を運営する株式会社ニッソーネットが、専門家の監修のもと執筆しています。
■監修者
野口 哲也
(のぐち てつや)
介護福祉士養成校の講師や、介護資格の講座立ち上げ・運営など、介護・福祉人材の育成に尽力。現在は、実務者研修や喀痰吸引研修をはじめとする介護資格講座の教務・企画、講師育成など品質管理業務に携わる。介護保険制度や法律に関する知見の深さと人材育成に対する情熱を持ち、介護業界関係者からの信頼も厚い。
みんな、排泄介助についてはわかったかな?
もっと詳しく知りたいという人のために、排泄介助についての豆知識をお届けするよ。ぜひ参考にしてみてね!
排せつ支援加算とは?
「排せつ支援加算」とは、利用者の自力での排泄を支援する事業所のために、2018年に新設された評価制度です。
2021年の介護報酬改定では、排泄介助の取り組みによって、入所時から利用者の排泄の自立に成果があったかまでを評価し、算定する形に変更されました。
加算を得るためには、おむつを使用しなくなるなど、排泄状況の改善が必須。
排せつ支援加算を受けている事業所では、医師や看護師など多職種と連携し、綿密な計画性をもって利用者の排泄の自立に向けた支援に取り組むことができるでしょう。
排せつ支援加算を取得している事業所なら、排泄介助が高齢者の尊厳に配慮しないルーティン業務になる心配は少ないと考えられます。
排せつ支援加算の算定をしていなくても、排泄介助の方法や手順について、マニュアルにまとめ、適切なケアの提供に尽力している事業所はあるでしょう。
マニュアルによって、排泄介助の際に準備するものや注意点、手順などに一定の指針があれば、排泄介助に慣れない介護職初心者も安心ですね。
毎日の介護記録では、トイレに行った時間・回数、便の状態や量、利用者の様子などを記録し、利用者の排泄の状況を把握、職員間で共有することで、利用者に寄り添った排泄介助の方法を考えていけます。
介護職にとって、学びや得るものが多い排泄介助。慣れないうちは抵抗があるかもしれませんが、前向きな姿勢で取り組んでいきたいですね。
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※グラフは「特別養護老人ホームにおける入所者の重度化に伴う効果的な排泄ケアのあり方に関する調査研究事業/公益社団法人 全国老人福祉施設協議会・老施協総研」を参考に当社が作成