高齢者の認知機能低下について
認知機能と聞くと、アルツハイマー型や脳血管障害型の認知症を思い浮かべる方が多くいらっしゃいますが、もともと認知機能とは、一般的に五感と言われる触覚・視覚・味覚・嗅覚・聴覚を感じ取る機能のことであり、認知症とはその感覚情報を正しく受け取れなかったり、間違って受け取ってしまう状態のことを指します。高齢者の認知機能は個人差が非常に大きく、遺伝やストレス・精神状態などの内面的要因と、仕事や趣味・運動などの外因的要因などの、多方面からの多数の因子が複雑に絡み合って影響を与えて、認知症の進行を促進させているといわれています。例えば、知能に関しては教育・学習の社会的・文化的経験をすることによって発達していく能力と、新しい環境に順応していくために問題を解決していく能力に大別することができ、後者は加齢に伴って能力の遂行力が低下していってしまいます。このことから、認知機能の加齢による影響は身体機能全般に対して与えるものですあり、瞬時の反応や判断というものが出来なくなってきてしまいます。もちろん、ゆっくりと時間をかけさて考えて行動すれば、正しく行動を行える場合も多く、高齢者の本来の能力を低く見積もってしまう可能性もあるため、「これは本当にできないことなのか」「時間をかければ自立しているのではないのか」という疑問や視点を常に念頭に置いて、評価を行う際はしっかりと見極める必要があります。
認知機能低下の傾向
加齢によって物忘れが激しくなることも多く、その記憶力の低下現象は、脳内で活動している細胞の減少に起因しており、最も加齢を感じ老化現象の1つといわれています。例えば、自分の身の回りで起きた出来事に対する記憶は加齢によって衰えやすくなってしまいますが、言葉そのものの意味やそれに関する経験・知識の記憶は衰えずらい領域になります。さらにいえば、言葉よりも自身の身体を動かして獲得した経験・知識の記憶の方が、より加齢の影響を受けずにすみます。
認知機能低下の原因
認知機能の低下する原因は、日常生活の中のいたるところに潜んでいます。
さきほどお話ししたように記憶力という機能は、20歳代をピークにした後、徐々に細胞数も機能も減退していき、60歳頃になるとその記憶力に加えて、情報を基に言動を決める判断力・適応力なども共に衰え始めてしまうため、結果的に物忘れが多くなってきてしまいます。
また、仕事や人間環境などのコミュニケーションや、やりたい事や行きたい場所があるにも関わらず、それを遂行することが出来ないという状況に対して、精神的ストレスが過度に溜まってしまったり、食欲低下が起因となった栄養バランスの乱れた食生活、過労、寝不足が続いてしまうと、認知機能に対しても過度な負荷がかかってしまい、結果的に認知機能の老化が亢進されてしまうことにつながります。しかし、この点に関しては十分な休息をとって適度に息抜きすることが出来れば回復する見込みもあります。
さらに、日常的に服用している処方薬も起因する場合があります。例えば、睡眠薬・抗うつ薬・精神安定剤などの脳に対いて作用する薬は、もともと脳細胞の活性化や沈静化を促すものであるため、その副作用によって物忘れや知能低下などの症状を示してしまうことがあります。また、高齢者ではそのような効能の薬を長年併用している方が多く、それらの相互作用によって、悪影響を強めてしまう場合も多くあります。
高齢者にとって重度の認知機能低下は、認知症・脳腫瘍・慢性硬膜下血腫などの脳に関する疾患を引き起こす可能性を持ちますし、外出が面倒になったり、気分がふさぎ込んでしまったりすることで意欲の低下を起こし、さらにそれが原因となって低下を引き起こすことにつながってしまいます。認知機能の低下を防ぐためには、日常生活の行動習慣にも気を配る必要があるといえるでしょう。